ひょんなことから 三人で同居することになった。
みんな 新規オープンした日本食レストランのメンツ。まずマネージャーのトニー。背が高く巻き毛とよく覗きこむと青い瞳をしている。ラテンの顔付きからしてテルマエロマエな感じでまさにイタリアン。深夜に仕事も終わり いつも ソファに座り込みテレビの映画見ながらマリファナをくゆらせてた。たまに金が入った時はコカ○○などやっていて 俺にも勧める。5ドル札を丸めて 入れようとしていると 「ジュン これにしろ!」と20ドル札を差し出してくる。彼に言わせれば 高額紙幣の方が良く効くそうだ。ホントか?
もう一人はゲルマン民族のマイケル。まぁ雑用みたいなことやってる。まだ小さな5、6歳の息子とアイスホッケーの練習しに 行く時 「マイコー!マイコー!」と息子に呼ばれ出かけて行く。
彼のきっちりした国民性か 住んでいる所全体の掃除をしっかりやってくれるのはいいが自分の部屋のベッドの下に隠しておいたスペシャルな本もいつの間にか無くなっている。やらなくても良いことをベッドの下まで点検して しっかりやり 後で俺の顔を見てムフフと含み笑いをするから困ったもんだ。
そして俺。日本からはるばる来た 新米の寿司シェフ。なーんもできないのに ただ日本人であるだけで その時の寿司ブームに乗って儲けようとするオーナーがオープンさせた"Sushi bar"に呼ばれて やって来た。
店から歩いて五分のコンドの二階三階でそれぞれの部屋をあてがわれ 互いのファミリーネームも知らないが 何とか毎日平穏に暮らしていた。
よく考えたら 大戦中の軍事ではないが ジュンとマイケルとトニー。日独伊…新たな三国同盟をこんなところで やってんじゃん。
こんなような街で よくもまぁ 三ヶ国の男がひとつの屋根の下 集まり くっついたものだ。
店のオーナーは金持ちのユダヤ人。
やはり どこでも 結局 操っているのは彼等なんだな…と敗戦国のひとりの自分は納得するしかなかった。